WORKS:JAPAN

春夏秋冬、一年を通して目まぐるしくその景色が変わりゆく四季に恵まれ、古くから詩にその美しさが様々に詠まれてきた日本の景色。狭い国土にあってこれほどまでに変化に富む風景に恵まれた国もそうあるまい。


春はあけぼの、夏は夜。秋は夕暮れ冬はつとめて。

かの有名な枕草子で清少納言が表現したのは殆どが耳と鼻へ入力される情報であり、視覚情報媒体である写真機で表現するのはとても難しい。

データの消失、プリントが焼失などがない限りある時の情景が消えることのないのが写真というもの。その写真の目的が単なる記録に過ぎない限りは恐らくこの趣味は長く続かないかもしれない。だけれども撮影に出向く時にはありとあらゆる情報が五感へ飛び込んでくる。川のせせらぎ虫の音、眠気を誘う暖かい陽の光、あるいは起きたばかりの目も瞬く間に覚めるほどにツンと我が身を貫く冷気。その時撮った写真からは当時の状況が鮮明に思い出されてくる。

そしてその思い出がまた私たちをフィールドへと駆り立てる。終わることのなきループが続いていく。


Instagram全盛の今、写真というものは時には公害になるほどに一般的なものとなったが、こんな時代を迎えるその前から日本人は他国の人間と比べても何かにつけて詩や絵や何か形にして残そうとすることが多かった印象がある。

それは四季折々に私たちの目と耳と鼻と口へ多くの情報が代わる代わる飛び込んでくるこの日本国に育ったからこその行動なのかもしれない。