美しき国々の天候破壊-3-

Sevelenでは大敗北を喫し、ベルニナ線への逃避行を図ったその翌日。

今日はヴェネツィア行きVSOE、ヴェニスシンプロンオリエントエクスプレスがスイス領内を通過する日。朝起きると窓の外には見事な晴天が広がっていた。だがここはスイス、その冷涼な気候故に殊に朝方はいつ何時霧に飲まれるかはわからないところである。何度その霧に痛い目に遭わされてきたか。大きな期待はせずに車を走らせる。

とはいえ目的地に近づくにつれて期待は確信に変わる。今回ばかりは勝てる。3度目の正直がいよいよ叶う。

長年夢見続けてきたロートクロイツの丘、青空が輝き太陽に照らされた地表も色彩豊かに美しきスイスの情景をこれでもかと強調する。その中にゆったりと弧を描くS字カーブを往く重連の赤い機関車と対照的な蒼きプリマドンナ。

世界中の鉄道風景を見渡してもこれほどに優れた美しさは他にはない。幾度となく辛酸を舐め続けてきたVSOEとの因縁はここで一定の和解へ至ることとなった。

が、ここで本日の工程が完了したわけではない。ひとまずはVSOEを追っかけてゴッタルド峠へ分け入る。

向かうはWassenのループ最上段。想定以上に時間に余裕があり、のんびりとカメラを構える。空は相変わらずのドピーカン。最高の撮り鉄日和、やがてVSOEがその美しい編成を誇らしげにループを上がってきた。

だがしかし。最高のタイミングでやってきた対向のローカルが裏被り。先に満点回答を提出した先人の回答例が幾らでもあるため、私からのこれ以上の言及は差し控えさせていただく。

VSOEの通過後程なくゴッタルドパノラマエクスプレスが峠を降りてくる。

これを谷の対岸から撮影。鉄道模型の世界にそのままありそうな箱庭的景色が実に美しい。

さて、この日の快晴をこの後どう活かすか。周辺のライブカメラを睨みながら最終的には東から迫りくる雲から逃れるようにWassen村裏から伸びるスステン峠をドライブして西へと向かいインターラーケンへ抜けることに。

アルプスの岩峰の合間を駆け抜ける葛折りの峠道がこれまた美しい。今回ご用意された車に相応しい世界最高クラスのドライブルートが道中をも華やかに彩る。晴天下のスイスはかくも美しい。

やってきたのはトゥーン湖畔を走る鉄道線。インターラーケンを終点とするドイツ国鉄ICEは2019年当時は引退が噂される初代車両ICE1で運行がされており、これをスイスの典型的な景観美の中で抑えることにした。

その後もこの日は青空の下、日の入りまで撮影を続行。すっかり時間も遅くなり、車中泊。

翌朝はわずかな希望に賭けてSevelenでの夜行列車朝練のリベンジを図ったが見事に敗北。

アウトバーンをひた走りフランクフルトから帰国の途についた。

一定の戦果は残したとはいえ、行程の大半が曇りに終わったことと連日夜20時21時に至るまでの撮影行は身体と精神に堪えたらしく、FRA→NRTのフライト11hの記憶がまるでない。

多分機内食くらいは食べたはずだが殆ど気絶状態で目を覚ますと成田空港にランディングしたあとだった。


今回の欧州遠征で強く決意したこと。

「欧州で旅程を固めてしまうことは超ハイリスク」

次回は例えワープ費用が高くつこうとも、徹底的に晴れを追求する。

欧州との因縁はVSOEと和解してもなお続く。

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