日本海の向こうに盛大な秋をみる

Bigboyの弾丸遠征から帰ってきたその翌週末の華の金曜日。私は仁川空港で海苔巻きナムルと韓国ビールに酔っていた。仁川空港で日本各地から各々集まってきた友人と合流して翌朝イチのフライトで向かったのはロシア沿海州・ウラジオストク。

10月といえば日本の北海道では紅葉が美しき季節。それは緯度のほぼ同じどころか日本海を挟んだ純粋な対岸でしかない沿海州も然り。2年ぶりのハサン線詣で晴天の再履修と紅葉を頂いてしまおうという計画。

相変わらず静かで動きの遅い入管をようやく抜け、手分けしてSIMカードの調達とレンタカーの受け取りに動く。そして空港を飛び出してスーパーに寄り道して食材を確保したのち、そのままの勢いで沿海州の原野へ。尤もこの日は曇天に見舞われており、ロケハンだけに終わったのだが。ちなみにかなり意味不明な藪の中をあっちへこっちへ彷徨い回ってみたが大した撮影地は見つかっていない。単なる暇つぶし。

今回のハサン遠征の本拠となるのは小さな小さな港町・スラブヤンカ。キッチン付き、部屋が3つと浴室付きのスイートルームが一部屋数千円とあって一同色めき立ったがシャワーの湯加減難易度は星五つ、wifiは届かないという安宿定番仕様。それでもあれだけ広い部屋を使えたのは何とも贅沢なものだったのだが。日本人に電子VISAが解禁されてはや2年、この小さな町のそのまた外れの宿にどれだけの日本人・外国人が来たのかはわからないが特に困惑されることもなくチェックインを済まし、近くのスーパーで惣菜を身振り手振りで調達して宿で小宴会と洒落込んだ。宿の外に見えるは最高に怪しい港の風景。

何から何までが最高にゾクゾクしてくる刺激的なロシアのド田舎の夜。

北朝鮮にほど近いこのエリア、色々と邪推してしまうものが色々目に入ってくるが見なかったことにしておこう。何が起こっても知らないゾ☆ お兄さんとの約束だ。

NK領内へ入る石炭貨物が幾らか存在していることが公然の秘密であるハサン線を撮ってる人間に言われたくない?正論すぎてグウの音も出ない。

だが、それでもなお来たくなる優れたロケーションが広がっている。それがこのハサン線の魅力である。我々はその鉄道路線の景観と車両、或いは歴史に惹かれているだけで全く他意はない。

2017年、電子ビザの解禁直後に電撃訪問を果たしたあの日以降、この辺境極まりないこの丘にも多数の日本人が登頂したという。いつしか一大観光地となっているこの事実に私は感涙を隠し得ない。

どうもこの日は列車の本数が少なく気がつけば午後になっていた。午後になると今度はスラブヤンカへ向かう支線が順光になる。ハサン線沿線の港町には貨物の取扱のためにそれぞれ支線が伸びているが、石炭積出の一大拠点であるポシエト港を除けばそれほど動きは活発ではない。とはいえ大陸的な景観は非常に魅力的であり、ダメ元でアタックしてみた次第。待つこと数時間、意外にもすんなり撮影に成功した。ラッキー。

かくして今回のハサン遠征は好天にも恵まれ、戦果はそこそこに、素晴らしい撮影行となった。毎晩の酒が美味かったことが今も鮮明に記憶に残っている。


TRAINSIT

0コメント

  • 1000 / 1000