ヨーロッパリベンジ3rd -1-

22年海外遠征第三弾は西欧。夏の欧州攻めはもはや定番行事と化している。そしていつも曇る。それでも残された課題を諦めることが出来ずに、如何に自分にとっての欧州が曇りがちとわかっていても尚も飛ぶ。今回は変わりがちな欧州の天気に対抗するために旅程を一切定めない暴挙に出た。人が四方八方へ大移動を繰り返すこの8月のバカンス期に行うそれはそもそも移動ができなくなるリスクすらあるのだが知ったことではない。すべては晴天の為。

…とはいえ、結局のところフランスから移動するに必要なTGVだけは如何ともしがたく出国前日に慌てて指定席を予約。もとはコートダジュールを目指す案もあったものの、夜行列車もTGVも満席。まともにチケットを買うと3万は軽く超えるときた。ストラスブール方面もちょくちょく予約不能な便が存在し、想像を超える空席のなさに危機感を感じたため。その危機感はのちに実感へと変わる。ともかく初日はフランスはパリ・シャルルドゴールに朝着、入国に係る所要が全く読めない為にこの日はレンタカーでパリ近郊の撮影で茶を濁すと決めていた。案の定、入国に二時間と更にレンタカーの借り出しに一時間がかかり、読み通りの抜群に遅い滑り出しを決める。

珍しく青い空のもと、撮れたのはドギツいピンクのゲンコツ客レと後撃ちゲンコツとinOui塗色化した安っぽいTGV。更にはパリの駅、殊にお気に入りであったモンパルナス駅には改札機が設置され気楽にホームに入れないときた。暫く来れていなかった間にフランスの被写体事情は渋くなり果てたものである。嘆いても仕方がないのでとにかく夕暮れ迫る20時半。TGVでストラスブールを目指す。そこまで今日の成果に凹んでないのはかつて一応とはいえパリでスナップ撮り歩いてた故の余裕。こんな形で過去の貯金が生きてくるとは思わなかった。

それにしてもバックパック背負った昔ながらのスタイルの旅行者が多い。ストラスブール到着時間にして23時も近いのにだ。その妙な違和感はすぐに己へ実害として降りかかった。物凄い数の旅行者が自分も乗るチューリヒ発・アムステルダム行き夜行へ雪崩れ込んだのである。幸いにして座る余裕はあったが、かつてこの夜行に乗ったときの悠々と二席を独占しての所謂"C寝台"はどうやったって叶わない。ガラガラの夜行列車に漂う気怠さと静けさが味わいたくてこの地へやってきたのに、これはあまりにも人が多すぎる。

とにかく自らのエネルギー消費を最小限にするように周囲からの情報を極力シャットアウトして疲れを武器にして酷な環境のもとにあって尚もぐっすり仮眠をとり、人の気の妙に多い列車内・駅を耐え忍び向かうはドイツアルプス麓の町、オーベルストドルフ。

狙いはこの町からドイツ北部の遠くドルトムントへ8時間かけて走行するIC2012。oberstdorfーulm間はDB218が重連で長い編成を曳いて走ることで著名な列車である。やや肌寒いくらいの爽やかで心地のいい空気のなかで待つことしばし。ディーゼルサウンドが木霊し、やがて単線の非電化支線にして随分と長い編成が牧地ド真ん中の直線に乗ったところをシュートした。背景に見えるドイツアルプスの鋭い峰々がただでさえ美しい景色を更に彩る。運河、紺碧色の海、どこまでも続く丘や森、または渓谷フィヨルド。中世から続く石作りの堅牢な建築並ぶ街。或いは角や曲線それぞれが際立つ現代建築。欧州と言えば?と聞かれ思い浮かべる風景は人それぞれ実に様々ではあるが、私にとってはアルプスとその麓に広がる牧草地の緑に萌ゆる景色がそれ。この美しい景色を求めて何度曇られようとも懲りずに欧州に飛ぶ。

さて、朝のIC客レ2本を撮ってしまえばもう他に撮るものもない。こんな時に車でもあれば山をちょっと越えて近郊へ観光へ行くということもできるのだがそうもいかず、ただ公園で黄昏て時間を潰した。流石に駅寝3時間で疲労も眠気も取れているわけもなく、丁度いい。

ようやく来た午後のoberstdorf行IC客レがやってくる時間。午後のIC客レ一本目を撮り、続く二本目の本命を待つ。

…が、元より定時運行には不評しかないドイツ鉄道。特に最近は何が何だかわからぬままに想像を絶するイレギュラーを頻繁に発生させると聞く。この日も多分に漏れず、当該の列車は1時間、2時間と遅れ遂には運行情報が示す列車位置はピタリと止まってしまった。このまま待っていてもこの日の宿への帰りが遅くなるばかりか山影でそもそも列車に日が当たらない。無念の撤退。帰るならなるべく早い方がいいとギリギリ間に合わなさそうな列車目指して駅まで3kmの道のりをキャリーを曳きながら全速で歩いた。

尤も、その乗りたかった列車も当然に10分くらい遅れてきたのだが。そうなると乗継も危うくなってくるとソワソワしながら乗継駅に着いてみると案の定列車はいなかった。乗継客は一様に諦めの表情。一時間も待ちぼうけかと途方に暮れているとやってきたのは撮影を諦めたIC2011。なんと3重連である。どうやら途中で機関車が故障した様子。これは沿線で撮りたかった…と思いながらせめてもの足掻きで3重連にカメラを向ける。

ふと背後に目をやると別の列車が入線している。行先を見てみると自分の行こうとしている駅が表示されている。お前も遅れてたんかい。慌てて飛び乗り、更に乗継を繰り返しこの日の宿へ向かった。結局ドイツ鉄道の遅れにより乗継時間の長いルート取りを強いられ宿に入ったのは23時。しんどい。

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