Road to Mongolia-1-


4年間の大学生活、長期の海外渡航は精々2,3回程度だろうと思っていた頃もありました。

北海道に強く惹かれていた自分のこと、北海道の比には海外の広大な自然にハマるのは必然だったのだろう。1ヶ月の欧州から帰ってきてすぐさま次以降の企画を思案し始めた。

その中にあって最もプライオリティが高かった場所、モンゴル。

モンゴルの草原を長大な列車が弧を描くと聞いて心が沸き立たないわけがなかったし、北京との陸路往復も最高に味わい深いルートであり、尚且つ一週間強にもわたるそれなりな時間が必要なのだという。そのようなプランを働き始めてからそう簡単に出来るとも限らない。

草原が緑に染まるモンゴル7-8月の短い夏。キックボードを片手にテントを担ぎ、一路まずは北京へ飛んだ。

空港泊といえど見事爆睡を決めて起きれば7時。いざ頑張ろうか、と思い外を見るとそこには霧かと思えばそうでもない50m先が見えないレベルの視界不良。中国というものを感じると同時に消え失せる戦意。多少なりとも芽生えていたやる気は赤子の手…いや、ティッシュペーパーをひねりちぎるより簡単に消し飛んだ。悶々と空港に引きこもり三時間。10時になってようやく重い腰を上げて北京の街中へ。

そのまま寄り道も何もせずモンゴル方面への夜行バスの発着するという木樨園客運站へ。表通りではないからわかりにくいとか色々前評判を聞いていたものの百度地図で予習しておけば何も問題なく辿り着く。バスチケットも苦もなくゲット。12時すこし前の購入だったけどまだ8席くらいは空席があったか。バスの定員からすると残り4分の1といったところ。そしてバスの時刻は15:50。妙に長い待ち時間。今回持ち込んだキックボードならばどこにでも行けるとはいえこのガスでは出掛ける気も失せる。近所に暇を潰せるところがあるかというと、香港重慶大厦のような汚いショッピングモールが数軒。それでも昼飯には困らないから良かったか。

そんなこんなでバスの発車時刻に近づき、いよいよバスへ…そう簡単に行けるわけがない。蒙古国境二連へのバスは待合室目の前からは発車せず、広い駐車場のどこかから発車する。一台の二連行きを発見したもののそれは50分発より一本早く出るもう一本の二連行き。外れ。じゃあもう一台はどこにいるのかと聞いても追い払われるのみ。一発殴ってやりたくもなったけれど百度地図での予習で広い駐車場の更なる奥地の存在を確認していたのでそこへ行ってみると確かに目当てのバスがいた。

とはいえ発車する雰囲気では全くなくエンジンも点いてなければ当然車内エアコンも点いてない。たまたま韓国人のバックパッカーが同じバスでモンゴルへ向かうということで彼と暇を潰すこと二時間待った。とてつもなくのんびりと大量のモンゴルを目指す荷物を載せていく様子を眺めながら。定刻から遅れて17:30、ようやく出発。定刻とはなんだったのか。

寝台に寝転がり、万里の長城を眺め、夕飯休憩では初めて見るニイハオトイレにテンションが上がる。モンゴルはまだ遥か遠く。出だしから刺激的な1日に先が楽しみになってくる。

深夜2時、バスは二連の近く何も無いところに停車。そのまま朝まで停車して翌朝8時に二連に到着。バスの周りにはモンゴル・ザミンウドを目指すという客引きが多数。こんな所で客引きに付き合ってはならないのが常識…なのにここでデカイ間違いを犯す。「バディーだぜハハハ!」なんてノリで一緒に国境を越える事にしていたあの韓国人旅行者が一緒にいること、行商も大勢それに乗っていく事から安心して客引きにのってしまう。ちなみに乗った車はジープではなく軽トラ。普段なら何も考えなくても危険を察知する程度のものにも気付かない超イージーミス。

それでも救いはあった。何故か彼らには韓国語が通じるらしく、おかげで韓国語を母国語とする者を擁する自分は申し訳なくもただただ交渉を任せるのみ。しかも、ザミンウドに直行するバスに乗っているグループとも接触できて結果的には直行バスの旅行者達と同じ時間にザミンウドに到着できる事を知り一安心。朝のうちには列車のチケットが売り切れると噂のザミンウド〜ウランバートル国内列車。午後に到着するこれだけ多くの旅行者がいる限り、万が一チケットが手に入らず一人で途方にくれる事はまず無い。死なば諸共。

結局12時まで待たされてようやっと国境越え…かと思えばそんな簡単に物事が進むはずが無かった。何故かバス停に連れて行かれ軽トラの運転手にバスの横で放置される。平和ボケなのか何なのか、妙に落ち着き払っていた「バディー」もここで流石に焦りをみせる。

軽トラドライバーは言う。「チケット?そんなのないよ。13時出発だ。じゃあね!」普通なら詐欺を疑う場面。 50元だけ取られて逃げられるのか?二人して困惑する。が、不可解な出来事はさらに起こる。最悪はチケット買ってバスに乗ればいいかと思っていたのにも関わらず、軽トラドライバーに案内されたバスは検札もせず、そもそもチケットがあったのかどうかもわからないまま発車。結果としてタダで国境を渡ってしまう。客層は御察しの通りで色々と問題が起こって後続のバスには次々と追い越されはしたものの、だけれども。 

そして辿り着いた早くも建物からも旧ソの香りがするザミンウド。問題の列車チケットは何の問題もなくコンパートメント丸ごと買い出来るほど。等級も選び放題。いよいよウランバートルへ。

今回の遠征の第一の目的だったこの列車。それは期待通り、いや期待以上の体験に。

とても古臭いコルゲート巻きの客車。外を除けばどこまでも続く大地と客車。質素ながら高級感あるコンパートメント寝台。ただひたすらに質素ながらもモンゴル人がひしめき自由な雰囲気漂う開放寝台。全てが素晴らしい。

車掌は各車両に一人づつ、愛想の良い女性。何からなにまで中国とは良い方向に違っている。今回は同じ部屋に居合わせた人が最高に良い人たちで、晩飯をご馳走になり噂に聞いていた通りひたすら食わされる。トランプを誘われるもそれまた独特な進行。そんな事をしながらモンゴル語だかロシア語だかを雰囲気で読み取り、多少の英語で何とか意思疎通して色々教えてもらったり、日本語を習っているというのでちょっと教えてみたり。訪れた先の雰囲気・風土を身近過ぎるほど身近に感じることが出来るのはこの手の一般夜行列車だからこそ。


気がつけば夜。外は窓越しでもわかる空を埋め尽くす星の数々。

楽しい夜が更けていく。

翌朝、3日の長い行程の末ようやくウランバートル到着。時間の無駄とも思えるような行程とはいえ安くて尚且つ中身の濃い行程。お高い直行便でお高いホテルに泊まって帰るモンゴルツアーもあれど、この国は折角行くならこの国の雰囲気を存分に味わうことのできるこのルートで行くべき国だと思う。

今なら白人バックパッカーが「インドと同じくらい興味ある国」と語っていた事にも納得出来る。

白人バックパッカーが殺到して宿を見つけることが難しくなっている点はちょい問題だけど。

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