ごっちゃ煮よくばり半島

大韓民国。日本とは海を挟んで極至近距離に位置するユーラシア大陸の半島国家。

稲作が盛んで海と山々の景観はどこか中国地方に似た景観を呈す。歴史的な経緯から街も人もどこか日本人と共通点も多い(※個人差あり)

そんな韓国はどうにも私個人的には何もわざわざ観光旅行に行く国ではないとの認識が抜けないが、鉄道趣味者にとしてはこの国にはカオスな世界が広がっている。

就職に伴って北部九州へ移り住んだ私は日本での労働者身分でどこまで動き回れるかじわりじわり、探り探りで行動範囲を広げようとしていた。その過程で目をつけたのが北部九州のその目の前に位置する韓国だった。そんなわけでお盆は実家へ帰る道すがらで韓国を経由することにした。退勤するや否やそのままの足で福岡空港から仁川空港へ飛ぶ。いくら日本に似た国とはいえ見慣れぬハングル文字が否応にも異国を感じさせテンションが上がる。この日の晩は空港野宿として翌朝、ソウルから鉄道に乗って半島を南下する。

日はすっかり天高く昇り、日本と同じような蒸し暑さと強い日差しに項垂れながら目指す踏切へ行軍する。そこには田んぼの中を綺麗に草刈りされた鉄軌道が直線的に伸びている。最高にいいロケーションである。やがてくるのは今回のお目当て長項線セマウル号。

″どこかで見たデザイン″で溢れかえる韓国。今でこそそういった類のものは減少しているものこういったイメージは日本人の中に未だ根強い。だがこういった他国製品を輸入し時には技術供与を受け(或いは真似をし)て自国生産し、追いつけ追い越せで発展を志した頃のモノが未だ残存する今、この事は他国の趣味人にとって興味深い事象を発生させる。自身の国で見られなくなった事柄がこの国では現役で活躍し、体験することが出来るのだ。

フランス製のゲンコツ機関車、日本製の地下鉄車両、そして今回目当ての列車の頭に立つ韓国製ながらアメリカンスタイルのディーゼルロコ。そしてそのアメリカンロコに牽かれるのはセマウル型客車。台形、隅が丸く象られた窓などの車両デザインはイタリアのそれを連想させる。車内はどことなく旧国鉄のそれを感じさせない事も無い。かつては流線型の機関車で客車を挟み込み、そのPP動車と呼ばれる編成は実に堂々たるものだったのだがそれは流石に今見ることは叶わず。

PP動車時代の名残である客車も2017年時点で残存しているのは長項線セマウル号が最後の砦となっていた。噂にはこの年がいよいよセマウル客車の最後の年だとも聞く。撮った後は乗らなければならぬ。駅に戻ってセマウル号のチケットを買い求める。

駅員にはソウルへ向かうのに高速鉄道ではなくなぜ時間のかかる長項線なぞに乗るのかと言わんばかりに「本当にそれでいいのか?」と問うてくれながら戸惑い半分で発券してくれる。

そこまでして乗ったセマウル客車の期待以上の快適さに着席するなや驚かされる。これはもはや日本で言うところののグリーン車そのもの。広い座席広い窓深いリクライニング。よく効いた冷房。クソ暑い夏の日にあってこれ以上の極楽があるだろうか。いやない。同じ車両に乗り合わせた大阪のおばちゃんを連想させる自由気まま自己愛に溢れる韓国のおばちゃん共には生粋のコテコテ大阪人を祖母に持つ私でも辟易したが。

翌日は中央線に乗ってフランス製ゲンコツ機関車ウォッチングとループ線を堪能し、更に大陸を感じさせる座席の大きな快適高速バスで日本っぽいサービスエリアを訪れながら釜山を目指す。釜山の大きな大きなバスターミナルからはパリで見たことのあるような切符を握りしめパリでも通過したような覚えのある改札機を通過して地下鉄に乗って釜山市街へ。

多国籍が過ぎるごっちゃ煮加減が病みつきになってくる。


TRAINSIT

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