米加激走三千キロ-1-

エアライン修行に精を出す2017年。マイル効率の都合から夏の渡航先はおのずと北米に絞られた。東南アジア⇔北米大陸間の乗り継ぎ集客に力を入れる日系エアラインは東南アジア・北米を出発地とするチケットを格安で販売する傾向にあるからである。また、日本を発地とする東南アジア行チケットも安価で手に入りやすく、この日本発券東南アジア往復チケットと日本ストップオーバーの東南アジア発北米チケットを組み合わせることで僅か2セットの航空券で3回の遠征を組むことが出来るのである。しかもマイル積算率はかなり良い。

では北米のどこへ飛ぶか。折角の夏、緑に溢れる地域へ向かいたい。尚且つ時間は作れても精々5日間ほど。退勤その日の夜にフライトが可能であるバンクーバーへ決定。

誰もが憧れる麗しきカナディアンロッキーのもとで優雅に撮り鉄をしようではないか。

……が、そう簡単には事が進むわけがなかった。到着翌日の天気予報は大雨。幾ら8時間で行ける近い北米とはいえ仮にも太平洋の向こう側まで飛んで大雨に打たれてたまるか。バンクーバー着後そのままの勢いでアメリカ国境へ向かい、500kmを駆け抜けシアトル近郊のモーテルへ転がり込んだ。

翌朝。予報通りの雨模様。だが素直に雨に降られる私ではない。すぐさまフリーウェイに飛び乗りカスケード山脈の東側へ。このエリアは太平洋からの風がマウントレーニアを始めとするカスケードの山々に遮られ、乾燥地帯を形成する。ここならば確実に晴天を期待できるという寸法である。

但し、晴天には悩まないこのエリアではあるが線路が多いという悩みがある。北方にはシアトルを発着しカスケードトンネルを通過して東西に走るルート、南方にはポートランド発着でコロンビア川沿いに東西を貫くルートがあり、そしてどちらの路線にも魅力的な個性を兼ね備える。正直に言って一日で遊び倒そうというほうが無理のある地域なのだ。だがしかし今回はあくまでもカナディアンロッキーをメインに置いた旅であるはず。というか優雅な休暇を過ごすのなら砂漠より緑豊かな場所で時を過ごしたい。

ともかく、先ずはカスケードルートで列車を待ったが結局スカ。順光時間が終わったとみるや諦めは早く直ぐに午後に順光ポイントが多数存在する南方の路線へ転戦する。

ロッキー山脈よりポートランドへ流れ出るコロンビア川沿いに走るこの路線は川の南北に路線が走る。メインの路線はどちらかというの川の南側のUP線なのだがこちらはそれほど目立った撮影地がこのエリアには存在せず、必然的に撮影者としては川の北側の単線BNSF線へ賭けることになる。もちろんこうなると列車が来るかどうかは運任せになるのだが、ここへ来て都合よく西行きの列車が立て続けに通過してくれる為に効率よく撮影地を攻略していくことができた。

川の流れを短絡するように築堤で川の中に弧を描くその線形は抜群に写真映えがいい。

力づくで手に入れた晴天の下、この雄大な路線を楽しんだ。

やがて山影が伸びてきてこの日の撮影は終了。撤収しようとしたその時、集めていた情報から漏れていた列車がやってきた。

銀色に光るその編成を見たその瞬間、慌てて列車の追撃を開始。ポートランドを出発したアムトラック・エンパイアビルダーである。まだギリギリ日の差すポイントはあるはず。想像以上に快速で走るその列車を何とかオーバーテイクし、急遽見繕ったポイントでカメラを構える。

ところが、列車は途中駅での停車が長いのか中々姿を現さない。

山影がどんどんと線路へ近づいていく。光線が保つのももうあと2分3分、あわやといったちょうどその時、銀色、いや金色に光り輝く列車が築堤に現れた。

これ以上ない好条件。日の入り直前の奇跡に大満足でコロンビア川を後にした。


ところでこの場所。バンクーバーから600km、今遠征の目的地ジャスパーからは1200kmの彼方に位置する。これはかつての特急白鳥の走行距離をも凌駕する。

のんびりしている間などない。必死の思いで北上を続ける。気が付けば23時に迫り、まともに飯屋も開いていない。やむを得ず入った日本にもある某ファミレスチェーンの不味さが強烈に記憶に残っている。眠そうな店員の超絶塩対応だけは絶品であった。


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